デュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療薬Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)を発売しているSarepta Therapeuticsは、2025年6月15日、出荷を停止すると発表した。(参考:デュシェンヌ遺伝子治療薬、米国で死亡例により出荷停止、6月19日アップ)
日本においては、同剤(「エレビジス®点滴静注」[一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク])については、本来、6月18日の中医協薬価専門部会において保険償還が議論される予定であったと考えられるが、薬価専門部会は急遽開催見合わせとなり、総会のみの開催となった。結果的に、同剤の保険償還は見送りとなった。
日本の業界紙によると、中医協委員から薬事承認を疑問視する意見も出たようであるが、医療機器審査管理課課長は、薬事承認(条件・期限付き承認)取り消しは想定していないと説明したとされる。
一方、米国の業界紙STATは、Sarepta Therapeutics社の出荷停止発表後に、オピニオンを公表している。Elevidysは、米国において2023年6月に迅速承認accelerated approval を取得し、これまでに900人以上が治療を受けており、Sarepta Therapeuticsは8億ドル以上の収益を得ているとされる。
患者団体は、Sarepta社は副作用情報の十分な開示を行っておらず、投資家への配慮が優先されていると批判している。こうした状況を受け、今後は、次世代の遺伝子治療に向けて、より安全で有効性の高い治療法を開発する必要がある。そのためには、製薬企業による透明な情報開示、FDAによる厳格な監視、リアルワールドデータの収集と共有、多職種連携による治療プロトコル整備が不可欠であるとしている。
(坂巻コメント:中医協としては、高額が予想される本製品の薬価収載を議論せずに済んで、むしろほっとしているのでは。本来、STAT記事にあるように、今後も開発が続く新しいモダリティ等を念頭におき、条件・期限付き承認制度の改善を議論すべきである。)
ニュースソース
STAT: Following second patient death, Duchenne muscular dystrophy families deserve answers about Elevidys. (By Christine McSherryJune 18, 2025)
https://www.statnews.com/2025/06/18/sarepta-duchenne-muscular-dystrophy-elevidys-death-fda-advocacy/?utm_campaign=daily_recap&utm_m%E2%80%A6