筆頭著者の所属はインド。日本からも石川県の眼科医が含まれる。
インドは、2015年以前に存在した国別政策により、特許満了前にもかかわらず、2015年にインド医薬品監督庁(DCGI)によりラニビズマブ・バイオシミラー(ラズマブ)を承認された最初の国である。 現在、インドには4つのメーカーと6つの異なるブランドのラニビズマブ・バイオシミラーがある。 同様に、2つのラニビズマブ研究分子、SB11(サムスンバイオエピス、韓国/ビョービズ、バイオジェン、米国)とFYB 201(フォーミコンAG、ドイツ)は、米国食品医薬品局(US FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、英国の医薬品医療製品規制庁(MHRA)を含む様々な規制当局によって承認された。 FYB 201はさまざまな地域で異なるブランド名で販売されている(米国:Cimerli®、欧州:Ranivisio®、英国:Ongavia®)。 韓国では、SB11(AmelivuTM、Samsung BioepisおよびSamil Pharm)とCKD-701(LucenBS、Chong Kun Dang)の両方が食品医薬品安全部(MFDS、韓国)により承認され、臨床で使用されている。 さらに、ラニビズマブのバイオシミラーであるXSB-001(Ximluci®、STADA Arzneimittel AG、ドイツ)もEMAとMHRAから承認を受けている。 最近、Rimmyrah(Qilu Pharma、スペイン)とS01LA04(Epruvy、以前はRanibizumab Midasとして知られていた、Midas Pharma GMBH、ドイツ)の2つのラニビズマブ・バイオシミラー分子がEMAから承認を受けた。 1つの分子が異なる地域で異なる会社によって異なる名称で販売されているのは、前述のFYB 201に見られる。 さらにインドでは、1つの分子が同じ地域で異なる会社によって異なる名称で販売されている。これは、一部の大企業が同国でより優れたリーチを持ち、製造上の困難を経ることなく利益を得ることができるためと考えられる。 今後、さらに多くの抗VEGF分子のバイオシミラーが承認される可能性があるため、本稿では、イノベーター分子のバイオシミラーが多数存在することの課題に焦点を当てる。
- 命名法と科学的記述の混乱
バイオシミラーの命名に関する国際的統一がなく、FDAは非専売名+4文字のサフィックスを推奨する一方で、EMAは商品名とロット番号による管理を支持している。日本では「BS+番号」で識別する制度があり、各国で異なる命名法が医師や研究者の混乱を招いている。
- 医師が直面する選択の課題
臨床試験では検出困難なまれな副作用に対して、バイオシミラーは短期間・限定的な試験しか行われず、安全性への不安が残る。ただし、発売後の使用経験による実地データ(リアルワールドエビデンス)が重要視されており、Razumabの初期炎症報告を除き、各国のバイオシミラーの安全性は概ね確認されている。製品選択に際しては、実地データ、費用、処方誘導インセンティブなどが関与し、特にインドではRazumabが高シェアを占めている。一方、米国では、承認の遅かったCimerliが「インターチェンジャブル」としての地位により市場優位性を確保している。
- 患者との意思決定における困難
複数のバイオシミラーが存在する中で、患者がどれを選べばよいか混乱が生じ、医師も明確な推奨をしづらい。また、安価な薬剤が「劣る」と感じられるノセボ効果も問題である。国や保険制度によっては、患者の選択余地がない場合もあり、強制的な段階的治療(ステップセラピー)が課されることもある。
- 価格と請求の地域差
インドでは製品ごとに価格が異なり、パッケージ価格と実際の取引価格に大きな乖離がある。一方、米国・韓国・日本ではバイオシミラーの価格は先発品の20–30%程度安価に設定されているが、さらなる競争による価格低下が期待される。
- 製造企業が直面する課題
バイオシミラーの製造には、高度なバイオ製造施設とノウハウが必要であり、先発品企業の製造工程に関する知的財産も障壁となっている。また、規制要件の進化に応じて、製造プロセスの変更・最適化も求められる。
- 結論
バイオシミラーの普及は、医療アクセスの拡大とコスト削減に資するが、その選択、適応、命名、価格に関する多様な課題が混乱を招いている。特に日本のようにオフラベルでのベバシズマブ使用が認められていない国では、単回使用可能なバイオシミラーの安全性と利便性が際立つ。今後の眼科領域におけるバイオシミラーの発展に伴い、これらの課題に対する建設的な解決策が求められる。
ニュースソース
Ashish Sharma(Lotus Eye Hospital and Institute, Coimbatore, TN, India), et al. : The conundrum of abundance: challenges of having too many biosimilars.
Editorial Expert Opin Biol Ther. 2025 May 14:1-4. doi: 10.1080/14712598.2025.2506445. Online ahead of print.(フリーアクセス)
日本人著者は、若林 謙二氏(若林眼科、石川県金沢市)