欧州6か国に日本、韓国を加えた8か国でのバイオシミラー使用促進策の効果を検討。需要側の政策として①金銭的インセンティブ、②処方ガイドライン、③処方予算、④処方割当、⑤教育と情報への取り組みを取り上げ、供給側の政策として①価格連動、②入札、③内部参照価格制度、④外部参照価格制度を取り上げている。
論文では、「日本のバイオシミラー浸透が際立って遅れている」とし、「日本独自の「高額療養費制度」は、患者の自己負担額に上限を設けており、需要サイドの対策が限定的であることが原因」と考察している(坂巻コメント:それだけではないが)。以下は論文の抄録。
目的:需要側および供給側の政策がバイオシミラー市場への浸透に与える影響を評価し、バイオシミラーの使用促進に有効な戦略を特定することを目的とする。
方法:本研究では、インフリキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブのバイオシミラー市場浸透状況について、欧州6か国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、英国)およびアジア2か国(日本、韓国)を対象に分析を行った。市場浸透の指標としては、バイオシミラーの市場シェアおよび過半数点(市場シェア50%以上)に到達するまでの期間を用いた。政策は需要側および供給側の施策に分類し、それぞれの実施の程度および時期を反映させるために重みを付した。スピアマンの相関分析により、政策の実施とバイオシミラー市場浸透との関連性を検討した。
結果:スウェーデン、イタリア、英国は、複数の需要側政策を導入しており、バイオシミラーの市場シェアが最も高かった。一方、日本および韓国は、需要側政策が少ないか、存在しないため、バイオシミラーの導入は緩やかであった。欧州諸国では、バイオシミラーが過半数点に達するまでにおおむね5~6四半期を要したのに対し、日本および韓国における到達予測は30四半期を超えていた。相関分析の結果、需要側政策の採用は、市場シェアの上昇(rs = 0.69, p < 0.001)および過半数点到達までの期間短縮(rs = -0.62, p < 0.01)と有意に関連していた。これに対し、供給側政策は相関が弱く、一貫性に欠けていた。
結論:金銭的インセンティブや処方ガイドラインといった需要側政策は、バイオシミラーの迅速かつ広範な導入と有意に関連している一方で、供給側政策の影響は限定的であった。バイオシミラーの普及促進および医療費削減を効果的に図るためには、政策立案者は需要側施策を優先して実施すべきである。
ニュースソース
Gyeongseon Shin(College of Pharmacy, Ewha Womans University, Seoul), et al. : Demand- Versus Supply-Side Policies in Market Penetration of Biosimilars: Which is More Effective?
BioDrugs. 2025 May 9. doi: 10.1007/s40259-025-00721-5. Online ahead of print.
PMID: 40343661 DOI: 10.1007/s40259-025-00721-5
(フリーアクセス)https://link.springer.com/article/10.1007/s40259-025-00721-5