鷹見 明奈、五十嵐中らが提案している「薬価算定フレームワークMARIE」を、過去に薬価収載された新薬に適用し、実際に算定された薬価とMARIEによる算定価格の比較を行った論文(Published online: 30 Apr 2025)。以下は、著者抄録の翻訳。
背景:現行の薬価制度における臨床病名変更後の薬価調整は、国民皆保険制度の下での薬剤費適正配分メカニズムとして機能している。 しかし、薬価決定の際に医薬品の価値が考慮されないことは、製薬企業の新薬開発・上市意欲を減退させる。
研究方法:研究では、新薬承認時の薬価算定フレームワークMARIEを適用した。 MARIEを用いて、32品目の新薬承認時の薬価を推計した。 また、新病態の最大患者数の推計には、市場拡大率を参照し、逆算した。
結果:新臨床におけるMARIEによる推定薬価と初回適応における推定薬価の変化率の中央値は-50.24%(範囲:-80.36%~16.39%)であった。 初回適応の場合,MARIEによる推定薬価の初回定価に対する比率の中央値は122.12%(範囲:15.57%~2237.38%)であり,実勢薬価と推定薬価の比率の中央値は,前回調査(125.65%)と同様であった。
結論:新病態に対応した汎用性、実用性、利便性、複数基準、質的VBPフレームワークMARIEを提案した。 MARIEシステムでは、最大患者数の換算表の「箱」(最大患者数の区分)が環境の変化に伴って変化した場合にのみ価格が変更される
坂巻注釈:著者らが提案している「薬価算定フレームワークMARIE」とは、multiple criteria qualitative value-based pricing frameworkのアンダーライン文字を繋ぎ合わせたもので、より広範な価値要素を定性的に評価することで、新薬の薬価を算定するものとしている。MARIEは、12の価値要素がスコア化され、そのスコアと製薬企業が独自に提案し、日本の規制当局と合意した最大治療対象患者数に基づいて1日の薬価が算出される。12の要素には、有効性、安全性、科学的新規性、 臨床的位置づけ、追加要素アンメットニーズ、生活の質(QOL)の向上、真のエンドポイントにおける改善、生産性低下の回避、利便性の改善、診断の改善、小児への使用、その他が含まれるとされる。
また、論文で対象とした薬剤は以下の通り。TAGRISSO、DUPIXENT、E KEPPRA、NOBELZIN、REVOLADE、POMALYST、SAMTIREL、NUCALA、VICTOZA、ONIVYDE、YERVOY、ALESION点眼液、TAKECAB、OFEV、 VYNDAQEL、TECENTRIQ、SAMSCA、FEBURIC、REVLIMID、LYNPARZA、STELARA、PERJETA、FASLODEX、HEMLIBRA、ACTEMRA、DIQUAS、LIXIANA、KEYTRUDA、MAVIRET。
ニュースソース
Akina Takami(Department of Health Policy and Public Health, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of Tokyo), et al. : The multiple criteria qualitative value-based pricing framework “MARIE” for new clinical status.
Journal of Medical Economics, 28(1), 606–614. https://doi.org/10.1080/13696998.2025.2492478
(フリーアクセス)https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13696998.2025.2492478