MedCity News、2025年4月20日公開の記事。米国では、医薬品だけでなく、消耗品、医療機器も海外に依存していることから、関税が病院にどのように影響するかを考察。医療機器の多くを輸入しており、2020年だけでも医療機器の輸入総額は約700億ドルに達しているとする。以下は要旨。
トランプ政権による中国製品への高関税政策は、医療供給品の価格上昇と供給網の不安定化をもたらし、既に財政的圧力にさらされている病院に深刻な影響を及ぼしている。特に原薬、医療機器、防護具などの必需品は中国製に大きく依存しており、145%の関税が適用されたことで、病院は高騰する調達コストに直面している。
米国医療機関は、長年にわたり自然災害や国際的混乱に伴う供給不足に対応してきたが、今回の関税はその中でも最大級のリスク要因と位置づけられている。米国では医薬品の大半が中国やインドから、医療機器の多くも海外から輸入されており、安定した供給が断たれれば、治療の質や医療従事者の安全に深刻な影響が及ぶ。
病院側は、サプライチェーンの見直しや代替供給元の模索、コスト上昇のシナリオ分析などの対応策を講じている。また、GPO(共同購入機構)との契約再交渉も必要となっており、契約条項の履行困難や価格上昇が契約破棄につながるリスクもある。
一部の病院では、関税によるコスト上昇分を患者や保険者に転嫁する方針が示されているが、メディケアやメディケイド依存の非営利病院では価格転嫁が難しく、人員削減や設備投資の停止といった対応を余儀なくされている。
供給網管理の専門家であるDee Donatelli氏は、問題の本質は製品の単価ではなく、「ケア全体のコスト管理」にあると指摘する。病院にはコスト全体を可視化・管理する体制が整っておらず、コロナ禍と同様、創意工夫による対応が求められている。
米国内での医療製品製造の促進は理想であるが、FDA規制やサプライヤーの寡占、市場の需要規模などの課題が山積しており、現実的には数十年を要するとされる。
最終的に、この関税政策は米国医療制度の「グローバル供給依存」という脆弱性を浮き彫りにしたものであり、病院は今後、創造性と協調性、そして困難な意思決定をもって、患者ケアの維持と財政健全性の両立を図る必要がある。
ニュースソース
MedCity News:How Are Hospitals Bracing for Tariffs? (Katie Adams、April 20, 2025)
https://medcitynews.com/2025/04/hospitals-tariffs-healthcare-china-trump/?utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz–v5Zf3CIM6KeL5fso8e0jkK-cnjRc-4JOl02FNroB5Wav140evJGUdimesUykHABcNAdN1y-NoLKQlPPtN9bcKgiv0Ykc5RNTLfZyRmdMIa54ixdY&_hsmi=357614015&utm_content=357614015&utm_source=hs_email