MedCity news、2025年4月14日記事。ポリファーマシー対策においては、服薬アドヒアランスや薬物相互作用にとどまらず、総合的でアウトカム重視のアプローチに移行し、より良い健康を実現するためのダイナミックで患者中心のプログラムとして再定義することが重要とする。
高齢化の進展に伴い、ポリファーマシー(polypharmacy)の患者が急増している。米国の高齢者の約40%が5種類以上の薬剤を服用しており、副作用や薬剤関連の有害事象(adverse drug events:ADE)のリスクを高めており、高齢者の入院の最大30%が薬剤に起因するとされている。
医療機関の多くは、従来の服薬アドヒアランス向上プログラムや減薬(deprescribing)施策に注力しているが、価値に基づくケア( value-based care:VBC)が普及する中で、これまでの薬剤管理手法では不十分である。単に服薬遵守(medication adherence)や減薬を目指すのではなく、薬剤を「全人的健康のツール」として捉える視点が必要である。さもなければ、重複治療や薬剤性合併症、見落とされた基礎疾患といった健康アウトカムを損なう要因を見逃す可能性がある。
減薬は必要な手段ではあるが、それだけでは不十分である。ある研究では高齢者の60%が不要な薬を服用している可能性が示唆されており、実際に退役軍人の半数以上が降圧薬や糖尿病薬の中止候補であったとされている。しかし、包括的な健康状態の評価なしに薬を中止することは、健康被害を引き起こす恐れがある。特に、長期オピオイド治療中の患者が不眠や不安によりベンゾジアゼピンを処方され、減薬後に睡眠と不安が悪化し、結果的にオピオイドの使用量が増えたという事例は、減薬が十分に検討されないまま行われた場合のリスクを示している。
したがって、薬物治療の最適化(medication optimization)には、患者中心の戦略が不可欠であり、単なる薬剤数の削減ではなく、個々の薬剤が患者の全体的な健康目標に合致し、長期的な悪影響がないかを評価する必要がある。
特にVBC契約下では、医療費抑制とアウトカム向上の両立が求められ、薬剤管理の不備は救急受診、再入院、合併症の増加を招く。したがって、以下のような包括的な薬物治療管理(holistic medication management)戦略が求められる。
- 薬剤の有効性を継続的に評価すること
- 治療目標を全体的に見直し、合併症予防に資する治療かを検討すること
- 相互作用だけでなく、臓器障害、栄養障害、認知機能低下などの潜在的リスクも特定すること
- 大量の臨床データを統合し、個別最適化を支援する技術の活用
これにより、薬剤使用の判断を事後対応型から予測・予防型へと進化させることができ、VBC下における医療の質と財政パフォーマンスの向上が期待される。
従来のアドヒアランス向上や減薬対応では、もはや多剤併用を十分に管理できない。薬剤最適化は、単なる服薬遵守ではなく、全ての処方が患者の健康改善に貢献しているかを検証することである。医療提供者は、紙の上の疾患管理に留まらず、真に患者の健康状態を向上させる視点を持たねばならない。
今後の薬剤管理は、服薬数を減らすことでも、単に服薬率を上げることでもなく、すべての薬剤判断が明確な健康アウトカム改善につながるよう再設計されるべきである。
ニュースソース
MedCity news:Medication Adherence and Deprescribing Programs Aren’t Enough for Today’s Polypharmacy Patients(By Adva Tzuk Onn, April 14, 2025).
https://medcitynews.com/2025/04/medication-adherence-and-deprescribing-programs-arent-enough-for-todays-polypharmacy-patients/?utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz–qVlRoBEMViBp1pA8MN82qGbFRvKrR0kZ3ubu90jQRn7umBt0qWiXgfDoCNw_IAu9rkuUEf2ZpjYmzxHaE5n7mDWgqz3JbStLwcmEZEzrVUINO-54&_hsmi=356764838&utm_content=356764838&utm_source=hs_email