世界保健機関(WHO):バイオシミラーによる必須バイオ医薬品へのアクセス拡大

世界保健機関(World Health Organization:WHO)は、2025年2月13日公開のホームページ記事で、バイオシミラーへの世界的なアクセス拡大におけるWHOの役割を強調している。

WHOは、バイオシミラーが必須生物学的製剤への世界的なアクセスを拡大するための重要な推進力であると認識しているとし、バイオシミラーの推進におけるWHOの役割として、

必須医薬品リスト(Essential Medicines List :EML)を通じて、品質が保証されたバイオシミラーを評価し、組み入れ、先発バイオ医薬品の安全性、有効性、費用対効果に優れた代替品として承認している。 WHOによるバイオシミラーの事前認定は、国連機関や各国によるバイオシミラーの調達に対する信頼性を高め、バイオシミラーの入手可能性と購入可能性を向上させる。また、WHOは安価なバイオシミラー・アクセスを加速するために、非独占的なボランタリーライセンスを提唱し、バイオシミラーの使用促進における規制の調和、医療従事者の教育、関係者の協力の重要性を強調しているとする。

2023年現在、WHOのEMLには81の生物学的製剤が含まれており、これはリストアップされている必須医薬品の15%以上に相当するという。EMLに含まれる生物学的製剤には、2013年のベバシズマブ(WHO EMLに追加された最初のモノクローナル抗体)、2015年のトラスツズマブとリツキシマブ、2019年のアダリムマブなどがある。

また、参照生物製剤とそのバイオシミラー製剤との間の互換性や切り替え( interchangeability and switching between reference biologics and their biosimilar)に関して、2021年、WHOは、EMLに収載された生物学的製剤のうち、品質が保証されたバイオシミラー医薬品を互換性があるとみなし、国レベルの必須医薬品リストで選択・調達できるようにすることを推奨している。

WHOのガイドラインはまた、特に中低所得国(low- and middle-income countries:LMICs)において、医療制度へのアクセシビリティと持続可能性を高めるために、費用対効果の高い調達戦略の重要性を強調している。

バイオシミラーの有用性は実証されているものの、その普及にはいくつかの課題が残されている。 規制上の障壁、医療従事者の認識不足、特定の地域における製造能力の限界などが、バイオシミラーの広範な受け入れと利用の妨げとなる可能性がある。 このような課題に対処するためには、政府、医療従事者、製薬業界が連携して、教育の推進、規制プロセスの合理化、地域の製造インフラへの投資などに取り組む必要があるとする。

 

ニュースソース

World Health Organization:Biosimilars: expanding access to essential biologic therapies.
https://www.who.int/news/item/13-02-2025-biosimilars–expanding-access-to-essential-biologic-therapies

 

 

WHOの必須医薬品モデルリスト(Model List of Essential Medicines)に収載されている生物学的製剤と代替治療薬(品質が保証されたバイオシミラーを含む)

医薬品。効能・効果
アダリムマブ
(治療代替品:セルトリズマブ ペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)
強直性脊椎炎、クローン病、若年性特発性関節炎、関節リウマチ
抗狂犬病ウイルスモノクローナル抗体 狂犬病曝露後予防薬
アスパラギナーゼ急性リンパ芽球性白血病
ベバシズマブ加齢黄斑変性
エノキサパリン
(治療代替品:ダルテパリン、ナドロパリン)
急性冠症候群
静脈血栓塞栓症
赤血球造血刺激因子
(治療代替品:エポエチンアルファ、ベータ、シータ、ダルベポエチンアルファ、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ)
慢性腎性貧血
フィルグラスチム骨髄毒性化学療法に伴う発熱性好中球減少症の一次予防および二次予防
インスリン(ヒト)
(可溶性および中間作用性)
糖尿病
長時間作用型インスリンアナログ
(治療代替品:インスリングルデク、インスリンデテミル、インスリングラルギン)
糖尿病
ニボルマブ
(治療代替品:ペムブロリズマブ)
転移性黒色腫
ペガスパガーゼ急性リンパ芽球性白血病
ペグフィルグラスチム骨髄毒性化学療法に伴う発熱性好中球減少症の一次予防および二次予防
リツキシマブバーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、多発性硬化症
トラスツズマブHER2陽性乳がん
2025年4月14日
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