【論文】韓国における新薬の価格交渉・医療経済評価免除制度

韓国では、償還プロセスを合理化し、財政的持続可能性を確保することを目的とし、新薬の価格交渉と医療経済評価を免除する制度がある。本研究は、韓国の2007年から2022年までに承認された785の新薬について、両制度免除となった医薬品の種類等について検討している。

研究結果は、3カ国以下で登録された医薬品は、国際登録が限定的であることに伴う価格面での不利から、価格交渉免除制度を利用する傾向が顕著であったこと。 2つの免除制度が導入されて以来、希少疾病用医薬品とがん治療薬の交渉合意率は顕著に増加していたことが主なポイント。以下は、論文に記載されている韓国の薬価制度の概要。

 

1.韓国の医療制度と薬価制度

韓国ではすべての国民が国民健康保険(National Health Insurance :NHI)に加入しており、薬価は政府と製薬企業の交渉によって決定される。保険適用の可否は、健康保険審査評価機構(Health Insurance Review and Assessment Service :HIRA)が臨床的有用性と費用対効果を評価し、最終的には国民健康保険サービス(National Health Insurance Service :NHIS)との薬価交渉で決まる。2007年からは「ポジティブリスト制度」が導入され、臨床・経済的に価値ある新薬のみを保険適用対象とする方針がとられている。

2.権利放棄制度の導入

ポジティブリスト制度には限界があり、特に希少疾患や末期がんなどでは有効なエビデンスの収集が難しく、アクセス障壁となっていた。また、慢性疾患など既存の代替薬が多い領域では、重複した交渉により時間と労力がかかっていた。これを受け、2015年に制度が以下のように改正された。

2.1. 薬価交渉の免除制度

代替薬がある新薬については、薬価交渉を免除し、薬価を加重平均薬価( weighted average price :WAP)の90%に自動設定する制度が導入された。希少疾患用薬や小児用薬などには例外的な薬価設定も認められている。また、薬価事後管理のため、収載前に期待収益に関するPVA( Price–Volume Agreement:価格・数量協定)が必要となる。

2.2. 薬剤経済評価の免除制度

代替薬がなく、患者数が200人未満の新薬には、薬剤経済評価の免除制度が適用される。HIRAはA7諸国(米・日・英・独・仏・伊・スイス)の価格を参照して価格の妥当性を評価し、その後、OECD諸国の価格も参考にNHISと最終交渉を行う。これにより、薬剤の国際的な価格水準と整合性を持たせつつ、希少疾患患者へのアクセスを確保している。

 

ニュースソース

Seung‐Rae Yu(Dongduk Women’s University, Seoul):Improving the Reimbursement Process for New Drugs: A Case Study of a Two‐Waiver System in South Korea.
J Eval Clin Pract. 2025 Apr;31(3):e70074. doi: 10.1111/jep.70074.

 

2025年4月8日
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