カナダにおける医療技術評価がもたらすアクセスの不公平に関する研究

Canadian Journal of Cardiology、2024年12月10日掲載論文(オープンアクセス)。

カナダは、その国民皆保険制度と薬価の安さが特徴的であるが、国民皆保険制度を持つ国では、唯一処方薬にグローバルな(カナダ全域での)保険が適用されない国である。 カナダ人の3分の1だけが、公的資金で賄われる医薬品保険に加入している。

カナダの医薬品償還決定は州(province, 各州のpharmacare)によって大きく異なる。なお、カナダ全体での費用対効果評価は、 カナダ医薬品医療技術局(Canada’s Drug and Health Technology Agency :CADTH)が行っている。それでも、保険償還の決定はしばしばカナダの診療ガイドラインと不一致であり、その結果、ガイドラインが推奨する循環器系のエビデンスに基づいた医療を提供することができない。

本研究では、2つの一般的な心血管系疾患である駆出率低下心不全(heart failure with reduced ejection fraction)と急性冠症候群における抗血小板療法(antiplatelet drugs in acute coronary syndrome)に推奨される薬剤について、最新のカナダ心臓血管学会(CCS)ガイドラインに基づき、全州の薬剤処方償還基準を比較している。

レビューされた24の薬剤において、CADTHの勧告に従ったのは33%に過ぎず、償還承認のほぼ4分の1(23%)がカナダのガイドラインと不一致であった。さらに、新薬はエビデンスとの不一致が最も大きかったとされる。そのほか、カナダにおける医療技術評価(Health Technology Assessment:HTA)に関するいくつかの問題点が明らかとなった。

  • 州や準州をまたがる医薬品承認プロセスにおいて、複数の階層にまたがる機関が存在するため、実質的な冗長性がある。
  • ケベック州を除くすべての州では、最初に共通の医療技術評価が実施されているにもかかわらず、最終的な薬剤償還承認には州間で大きなばらつきがある。
  • どの州でも、心臓病治療薬の新しいエビデンスや薬価の変更を考慮した処方のタイムリーな更新を可能にするプロトコルは存在しない。
  • この調査では、処方決定の23%がガイドラインに基づく推奨と食い違っている。
  • フォーミュラリー間でも不一致があり、複雑で一貫性のない償還決定プロセスが浮き彫りになった。
  • 本研究でよく遭遇する2つの心血管系シナリオに基づくと、現在の薬剤処方はエビデンスに基づいた完全な心血管系治療を可能にしていない。
  • CADTHの推奨に唯一依存していないNon-Insured Health Benefitの連邦プランとケベックプランが、現行のCCSとその関連学会のガイドラインと最良のエビデンスに最も一致した2つのプランであった。

 

ニュースソース

Morgane Laverdure(Division of Cardiology, University of Ottawa Heart Institute, Ottawa, Ontario), et al.: Can the Present Canadian Health Care System Provide Evidence-Based Pharmaceutical Care? Consideration of Two Important Cardiovascular Clinical Contexts.
Canadian Journal of Cardiology (Articles in Press, December 10, 2024Open access)

(全文は以下でダウンロード可)
https://onlinecjc.ca/action/showPdf?pii=S0828-282X%2824%2900952-8

2024年12月23日
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