The Economist 2024年10月24日のLeaders欄(紙版7頁)記事。同記事の翻訳が日本経済新聞11月5日朝刊に掲載された。もとのタイトルは、
”The everything drugs | It’s not just obesity. Drugs like Ozempic will change the world – As they become cheaper, they promise to improve billions of lives”
「万能薬 | 肥満だけの問題ではない。オゼンピックのような薬が世界を変える―安価になれば、何十億もの人々の生活が改善されるだろう」
(日本経済新聞では「『肥満治療薬』の社会的インパクト」
記事の概要は以下の通り。
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病治療薬として始まり、現在は肥満、心血管疾患、腎臓病、さらにはアルツハイマーや依存症治療にも効果が期待されている。これらの薬が安価で使いやすくなれば、10億人以上の生活を改善し、医療業界や経済、社会に深い影響をもたらすと予測される。セマグルチドやチルゼパチドなどの薬剤はアメリカで大きな市場価値を生み、他国でも肥満問題の解決策として需要が急増している。
GLP-1薬は単に体重を減らすだけでなく、心臓発作や脳卒中のリスクを低減し、睡眠時無呼吸症候群や慢性腎臓病にも効果があるとされる。さらには脳の収縮やアルツハイマーの認知機能低下を緩和する可能性も示唆されている。また、これらの薬が経済活動や社会の価値観にも変化をもたらすとされ、肥満や依存症が「意志の弱さ」ではなく「治療可能な疾患」と見なされるような風潮が生まれる可能性がある。
一方で、これらの薬の処方にかかる総費用は莫大なものになる可能性がある。しかし政府にとっては、他の費用も削減できる。肥満に関する直接的な医療費だけでもアメリカでは年間2600億ドルにのぼり、薬物乱用は刑事司法制度にとって大きな負担となっている。アルコール税による州政府の収入は減るが、労働者が健康になるにつれ所得税収入は増える可能性も示している。
記事では、最後に「革命は始まったばかりです。その可能性は魅力的です。TheGLP-1 revolution is just beginning. Its promise is tantalising.」と締めくくっている。