JAMA Network 8月5日公開の記事1)。米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)が鎌状赤血球症に対する遺伝子治療、exagamglogene autotemcel(exa-cel)(Casgevy、Vertex Pharmaceuticals、CRISPR Therapeutics)を承認したことで、変革的な遺伝子編集技術であるCRISPR-Cas9は、発見からわずか11年で正式に承認された治療法となった。遺伝子治療技術としては、他にもレンチウイルスベクター療法であるlovotibeglogene autotemcel(lovo-cel)(Lyfgenia、bluebird bio社)がある。これらの治療の米国における1回投与分の定価は、exa-celが220万ドル、lovo-celが310万ドルである。これらの治療法は多大な利益をもたらす可能性がある一方で、大量化学療法の投与が必要であり、不妊症や二次悪性腫瘍のリスク上昇の一因となる可能性もある。 さらに、遺伝子編集の長期的な安全性、特にオフターゲット塩基編集のリスクは未知数である。これらの治療法のコストが非常に高いことと併せて、今後の普及の障壁となる可能性がある。
論文著者によると、遺伝子治療がこのように高価格である根拠は、一回の投与で多くの価値を提供するからであり、それゆえ高価格で報われるべきであるということである。さらに、米国の鎌状赤血球症患者のほとんどが黒人であることから、「公平性への配慮equity considerationsをどのように薬価に反映させるべきか」という疑問がもたれるとする。
鎌状赤血球症に対する薬剤開発は、歴史的に、他の同程度かそれ以下の有病率の疾患に対するものに比べて遅れている。 CRISPR-Cas9技術の最初の応用として鎌状赤血球病を用いる正当な理由となったのは、臨床的に鎌状赤血球病患者が直面している歴史的な不公平さであったとする。公平性のメーカーへのインセンティブとして高価格設定や費用対効果評価における閾値を高く設定することもある一方で米国市場では、高価格であるがために、保健から除外されることも起きている。その結果、患者の自己負担を増加され、現存する健康格差をさらに悪化する可能性につながる。
遺伝子治療の最近の成功は、両刃の剣double-edged sword であり、患者の医療アクセスに対する潜在的な障壁を浮き彫りにしている。高価格がヘルスケアやバイオテクノロジーのエコシステムを刺激incentivize health care and biotechnology ecosystemsし、顧みられない病気の治療薬をますます開発させるかもしれない一方で、高価格は逆にこれらの治療法へのアクセス制限につながるというパラドックスにつながるとしている。そのため、米国メディケア・メディケイド・イノベーションセンター(Center for Medicare and Medicaid Innovation:CMMI)は成果ベースの支払いのパイロットプログラムを開始している2)が、医療機関の一部では損失に直面するなどの問題が指摘されている。そこで論文では、患者へのコストから金銭的報酬を切り離すアプローチとして、サブスクリプション型あるいは賞金モデルsubscription-type /prize modelを提案している。(太字は坂巻による)
ニュースソース
- Edward R. Scheffer Cliff(Program On Regulation, Therapeutics, And Law, Division of Pharmacoepidemiology and Pharmacoeconomics, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, Massachusetts), et al.: The Double-Edged Sword of Extremely High Prices for Gene Therapies in Sickle Cell Disease.
2024;332(9):703-704. doi:10.1001/jama.2024.11703 - 米国CMSが細胞・遺伝子治療アクセス研究計画書を公開(2024年6月29日公開)
https://www.pcubed.jp/medicine/20240629-848/
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#鎌状赤血球
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