Science 、2025年5月22日記事。閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)患者を対象とした大規模臨床試験の結果が2025年5月に発表され、Apnimed社が開発中のAD109という開発薬が、気道の開存を維持する筋肉を刺激し、無呼吸イベントを大幅に減少させたことが示された。この結果に基づく、OSA治療薬の可能性についての概説。
AD109は、以下の2剤で構成される。
- アトモキセチン:ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、上気道筋(特に舌の基部にある舌下筋)を活性化。
- アロキシブチニン:アセチルコリン受容体を阻害し、舌下筋を抑制する神経活動を遮断することで筋緊張を保つ。
臨床試験は、646人のOSA患者を対象に2023年に開始された6か月間の無作為化試験で、無呼吸イベントが56%減少、患者の22%が「完全コントロール」(1時間あたり5回未満の発作)に到達し、血中酸素濃度の低下の深さと持続時間も「有意に」改善した。ただし、患者の主観的症状(例:日中の眠気)の改善が不明であり、より長期的な臨床評価(心血管疾患リスクへの影響など)が必要とされる。
(坂巻コメント:アトモキセチンは、現在、ニトロソアミン問題で、日本国内で不足している。この論文が公表されたことで、目的外使用による不足拡大が懸念されるか。)
ニュースソース
Meredith Wadman: Sleep apnea pill shows striking success in large clinical trial.
Science, doi: 10.1126/science.zg1hhn8
2025年5月26日