【論説】MAGAの少子化対策はなぜ誤っているのか?

2025年6月22日Economist記事。以下は要約。

アメリカやイギリスの保守政治家たちは、少子化対策として出生率を高めるための政策に注目している。トランプ前大統領は体外受精(IVF)の費用軽減を求め、5,000ドルの子育て手当も提案している。イギリスのナイジェル・ファラージも、減税や給付によって出生を促進しようとしている。

少子高齢化による財政への影響を懸念し、日本や韓国など出生率が極端に低い国々は、過去に巨額の予算を投じて対策を講じてきたが、成果は限定的であった。現在の保守系のプロナタリズム(出生促進策)は、特に労働者階級の女性を対象としており、彼女たちの出生率の落ち込みが最も大きいことから、ある程度の効果が期待されている。

しかしながら、過去の例では、出生数の増加に対して政策費用が非常に高くついた。ハンガリーのオルバン首相は2011年から手厚い出生支援政策を展開し、出生率を一時的に上昇させたが、GDPの5.5%を費やす高コストであり、近年は再び低下傾向にある。日本やノルウェー、ポーランドも同様の政策を実施したが、持続的な出生率の向上にはつながっていない。

ファラージやバンス副大統領は、出生率向上を移民依存の低減手段としても捉えており、対象を低所得層に絞る方針である。貧困層の女性は、インセンティブによって出産行動が変わりやすいとされるが、望まれる子どもの数自体が減っているわけではないという証拠はない。加えて、若年層や教育を受けていない女性の妊娠数が減ったことで、教育進学率が向上し、社会的利益が生まれている。

したがって、出生率向上を目的として貧困層への支援を行うのは、効果に対して費用が過大であり、場合によっては女性の教育機会を損なう逆効果も懸念される。国家がすべきは、子どもを産ませることではなく、支援を必要とする家庭を支えることである。家族計画は、各家庭に委ねるべきである。

(坂巻コメント:米国に限らず、先進国の多くでの経済支援による少子化対策には効果がない、あるいは費用対効果に見合わないことを明確に問題指摘しているが、一方で、代案はないことが結論。個人的には、トランプ政権の息苦しさが子供を持つことにも夢を感じられない社会を生み出しているように感じているが。)

 

ニュースソース

Economist: Why MAGA’s pro-natalist plans are ill-conceived.
https://www.economist.com/leaders/2025/06/19/why-magas-pro-natalist-plans-are-ill-conceived

2025年6月23日
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