論文は、イランにおけるバイオテクノロジー修士課程カリキュラムについて関係者に対するデルファイ・インタビューで現行カリキュラムの有効性を評価したもの。研究としてよりも、イランにおけるバイオテクノロジー修士課程の適格基準、修士学生のバックグラウンド、カリキュラム内容などを知るうえで有用な論文。例えば、就職に必要なスキルとして、以下のような項目が示されている。
- コミュニケーションスキル
- 実験動物を扱う
- 動物細胞培養の初期技術
- 幹細胞培養の初期技術
- ワクチン生産の初期技術
- 組換えタンパク質の初期技術
- mAbの初期技術
- PCR技術とデータ解析
- インシリコおよびバイオインフォマティクス解析
以下は、論文の要旨
背景:バイオテクノロジーは急速に発展している分野であり、イランは教育の枠組みを改善することで、バイオシミラーにおける地位を高めることを目指している。 米国、英国、スイス、中国、インドなどの成功国は、バイオテクノロジー部門を発展させる熟練した卒業生を輩出する上で、的を絞った教育プログラムがプラスの効果をもたらすことを例証している。 研究は、カリキュラムの妥当性と卒業生の雇用可能性の間に重要な関係があることを示しており、包括的なカリキュラム評価と改革が学生の成功と教員の関与を高めることができることを示唆している。 本研究では、イランにおける医療バイオテクノロジー修士課程カリキュラムを、産業界の要求や世界的な進歩に合わせて改訂する必要性について調査した。
方法:修士課程の学生、教授、業界関係者を対象に、デルファイ法を用いて現行カリキュラムの有効性を評価した。
結果:現在のカリキュラムは教育目標にほぼ合致しているものの、実践的なトレーニングやリソースの利用可能性には大きなギャップが存在することが明らかになった。 特に、動物細胞培養、ワクチンやモノクローナル抗体の設計・製造などの必須スキルや、効果的なコミュニケーションやチームワークなどのヒューマンスキルにおいて、多くの学生が就職に向けた準備が不十分であると感じていることが報告された。 これらの不足に対処するため、実践的な経験と学際的なアプローチに焦点を当てたいくつかの新しいコースが推奨された。 また、実験施設の充実、インターンシップの統合、チームベースの学習方法の採用など、学生の意欲向上とスキル習得のための提言がなされた。
結論:バイオテクノロジー教育への継続的な投資は、グローバル化した市場において競争上の優位性を維持するために極めて重要である。 全体として、本研究は、バイオテクノロジー業界のダイナミックなニーズに合わせて教育プログラムを適応させることの重要性を強調し、卒業生がこの分野で成功するキャリアに必要なスキルを有することを保証した。
(坂巻コメント:論文要旨にバイオテクノロジー成功国が例示されているが、日本は含まれていない。日本では人材育成の掛け声だけは高いが、修士課程を保有し、論文のようにカリキュラムの評価を行っているイランは、日本より進んでいるとも言えよう。)
ニュースソース
Amirhossein Ahmadieh-Yazdi(Department of Medical Biotechnology, School of Advanced Medical Sciences and Technologies, Hamadan University of Medical Sciences, Hamadan, Iran), et al. : Bridging the Skills Gap: Insights and Recommendations for Updating Medical Biotechnology Master’s Curriculum in Iran.
Avicenna J Med Biotechnol. 2025 Apr-Jun;17(2):147-156. doi: 10.18502/ajmb.v17i2.18566.
PMID: 40453912 PMCID: PMC12123187 DOI: 10.18502/ajmb.v17i2.18566