バイオシミラー開発の新潮流―製造技術ではなく、高度な分析技術と機能研究技術が求められる

2025年5月27日、Generic and Biosimilar Initiative (GaBI)オンライン記事1)では、4月1日、Drugに掲載された「Tailored Biosimilar Approach」と題する論文2)を紹介している。ICHも、本年5月13,14日にバイオシミラー開発において臨床的有効性試験(clinical efficacy studies:CES)を必須としない枠組みを発表している(参考1)が、本稿は、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)が4月1日に発表した「バイオシミラー開発におけるテーラーメイド臨床アプローチに関するリフレクションペーパー案」(参考2)に続くもの。

Drugの論文では、バイオシミラー医薬品の規制の枠組みが、CESがもはやデフォルトでは要求されない、テーラーメイドアプローチに向かって進化していることを概説している。 特にモノクローナル抗体と融合タンパク質の場合、バイオシミラー性を証明するには、確実な分析データ、機能データ、薬物動態データがあれば十分であるという証拠が増えつつあることをレビューしている。 著者らは、CESは科学的価値をほとんど付加しないことが多く、品質や機能性の不一致に起因する不確実性を解決できない可能性があると論じている。

バイオシミラー医薬品の承認に関するレトロスペクティブ分析から、著者らは、承認決定は一貫してCESの結果ではなく、品質データと一致していることを示している。 この論文では、CESが臨床的に意味のある違いを検出する感度に欠け、一貫性のない結果をもたらす可能性があることも論じている。 著者らは、バイオシミラー開発はケースバイケースの評価に基づくべきであるとし、これを「テーラーメイドアプローチ」と呼んでいる。

CESはバイオシミラー性(biosimilarity)に関連する微妙な差異を検出するには感度が十分でないことが多いというのが世界的なコンセンサスとなっている。一方、抗体薬物複合体や細胞治療薬のように、作用機序が未知であったり、理解が不十分であったりする場合、異種性の高い、あるいは特性評価が不十分な製品で、分析法ではバイオシミラー性を十分に評価できない場合、局所投与されるバイオ製剤や安全性・免疫原性に懸念がある場合などに、CESが必要になることがあるとしている。

バイオシミラーの開発は現在、既知の作用機序を中心に設計されたアッセイを用いた、詳細な物理化学的・機能的特性評価が中心となっている。 これらのアッセイによって重要品質特性(critical quality attributes :CQA)が特定され、それらは基準製剤の確立された変動範囲と一致することが求められる。結論として、著者らは、薬物動態試験に裏付けられた高度な分析試験と機能試験(advanced analytical and functional testing)に重点を置いた総合的証拠(totality-of-evidence)アプローチを用いれば、一般的にCESを用いなくてもバイオシミラー性を確認できると述べている。

(坂巻コメント:今後のバイオシミラー開発においては、論文の結論にあるように高度な分析試験と機能試験の技術力が求められる。その意味で、製造に重きを置いた日本の厚労省の政策は的外れ、あるいは時代遅れと言わざるを得ない。すでにインドや中国、韓国を含む欧米では、CDMOではなく、分析試験と機能試験に重点を置いたCRDMOへの潮流が加速している。いずれにしてもバイオシミラー開発に関わるガイドラインの見直しも急がれるべきである。)

 

ニュースソース

  1. Generic and Biosimilar Initiative (GaBI):Biosimilar clinical efficacy studies: are they still necessary?
    https://gabionline.net/biosimilars/research/biosimilar-clinical-efficacy-studies-are-they-still-necessary
  2. Elena Guillen(Department of Clinical Pharmacology, Hospital Clínic, Barcelona), et al. : The Tailored Biosimilar Approach: Expectations and Requirements.
    2025 May;85(5):601-608. DOI: 10.1007/s40265-025-02168-y(オープンアクセス)

参考1:ICHは、バイオシミラー開発プログラムにおける比較有効性試験の有用性を判断するための枠組みを採択

参考2:EMA、非介入研究からのRWEに関するリフレクション・ペーパーを公表

2025年5月29日
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