【論文】医薬品開発における米国食品医薬品局ガイダンスの評価

JAMA Health Forum、2025年5月23日の論文。

米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は、医薬品規制の円滑な実施のため、規制よりも内部手続きが簡略な「ガイダンス文書」を活用している。これらは法的拘束力を持たないが、業界では事実上の規範として受け取られており、その内容は手続き的な変更から臨床試験におけるインフォームド・コンセントの免除条件にまで及ぶ。2024年12月、FDAは2023年歳出法の要請に基づき、ガイダンス発出の実務と今後の改善提案をまとめた報告書を公表した。論文では、ガイダンス文書の歴史を振り返り、出版慣行の傾向を評価し、さらなる改善のための改革を提案している。以下は、論文の概要。

(坂巻コメント:FDAに対する外部からの政策評価が行われ、こうした論文がJAMAに掲載されることに注目すべき。)

 

ガイダンスの歴史とCDERにおけるガイダンス発行の傾向

FDAにおける最初のガイダンスは1977年に抗うつ薬の臨床評価に関して作成された。その後、1997年のFDA近代化法により、ガイダンス文書の発出に関する基本的枠組みが制度化された。2011年には「Good Guidance Practices」を提示し、策定から発行までの標準化が推進された。

医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research:CDER)によるガイダンスは、2010年から2024年までに748件(ドラフト32.9%、最終版67.1%)が発行されており、2017年の228件から2023年には約3倍の677件に増加している。ドラフトガイダンスの中央値年齢は約2.8年、最終ガイダンスは5.6年と、更新が遅れがちな傾向も見られる。

今後の課題と提言

  1. ドラフトの長期化と情報の陳腐化
    たとえば、リアルワールドデータに関するガイダンスでは、3年半以上かけて最終化されたにもかかわらず、内容の変更は限定的であった。CDERには、最終化を義務づける明確なタイムラインが存在しない。
  2. 書類作成遅延の制度的要因
    1995年文書削減法により、パブリックコメントを伴う情報収集を含むガイダンスは、最低6か月の遅延が発生する。COVID-19緊急時にはこれが免除され、迅速な発出が可能となった実績がある。
  3. 増加するガイダンス数への対応不足
    CDERは2018~2024年にかけて、2010~2017年の2倍の速度でガイダンスを発出しているが、古いドラフトの見直し体制が追いついていない。全センターでの定期的なレビューが必要である。
  4. 読みやすさ・アクセス性の向上
    2020年に開始された「Guidance Snapshot Pilot」では、図解つきで要点を示す簡易版が試行された。今後は初版から読みやすいフォーマットを採用することが望まれる。

 

ニュースソース

Joseph T. Kannarkat(Department of Medicine, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, Maryland), eta l.: Assessing US Food and Drug Administration Guidance Practices in Drug Development.
JAMA Health Forum. 2025;6(5):e251124. doi:10.1001/jamahealthforum.2025.1124(オープンアクセス)

 

2025年5月26日
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