【論文】バリューベースヘルスケア導入状況の国際状況

JAMA Health Forum2025年5月16日公開の論文。価値ベースのヘルスケア(value-based health care:VBHC)の世界的導入状況を検討するために50の文献レビューが行われた。対象国は、高所得国からのイニシアチブが47件、上位中所得国からのイニシアチブが2件、下位中所得国からのイニシアチブが1件。対象国別では、米国が31件、オランダが8件、スウェーデンが2件、ブラジルが1件、英国が2件、イタリアが1件、ベルギーが1件、デンマークが1件、ポーランドが1件、中国が1件、ケニアが1件。

以下、結果の要約。

  1. VBHC導入の背景と課題

多くの研究では、医療サービスの需要増加やコスト上昇への対応、医療従事者のコスト認識の必要性といった組織的課題がVBHC導入の動機とされていた。また、断片化した医療提供体制やアウトカムの不透明性、従量制支払い制度の限界、人口高齢化・慢性疾患増加への対応も課題として挙げられた。

  1. 実施主体と関係者

多くのVBHCの取り組みは、病院や診療科単位での医療従事者による主導であった。9件の研究では病院上層部によるトップダウン型の導入が報告され、政府系保険制度などの支払者が重要な推進役である場合もあった。また、4件の研究では、患者がPROMs(患者報告アウトカム指標)を通じた重要なステークホルダーとして位置付けられていた。

  1. 実施内容とVBHC要素

VBHCフレームワークの6要素すべてを含む取り組みはなかったが、以下のような要素が実施された。

  • 統合ケアパスウェイ:26件(うち9件は「統合診療ユニット」)
  • アウトカム指標導入:16件(3件はPROMsを主軸)
  • コスト測定:多くが実施、5件はアクティビティ・ベースド・コスティングを使用
  • バンドル支払い制度:11件(米国が中心)
  • 医療機関間の統合的ケア提供:5件
  • デジタル基盤:多くが電子カルテを活用、14件は部門間・地域間のアウトカムやコストのベンチマークを実施
  1. HVHS(High-Value Health System)要素との関連

VBHCの取り組みは以下のHVHS構成要素を多く含んでいた:

  • 統合ケアおよびバンドルサービス
  • アウトカム測定
  • コスト測定
  • パフォーマンス・ベンチマーキング

組織的な統治体制やリーダーシップの明確化、支払い制度(とくにバンドル支払い)がVBHC推進の鍵とされていた。

  1. 実施規模

実施規模は様々で、22件が診療科単位、9件が院内部門間、8件が複数病院・組織ネットワークレベルでの導入であった。地域レベルの取り組みは8件、国レベルは4件にとどまっていた。

VBHC要素およびHVHS構成要素の数は多くの取り組みで2~3、あるいは3~5程度であり、全要素を網羅した取り組みは存在しなかった。しかし、HVHS構成要素が多い取り組みほど、実施レベルは地域・国家レベルへと拡大する傾向にあった。

 

ニュースソース

Ayooluwa O. Douglas(Health Systems Innovation Lab, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Harvard University, Boston), et al.: Global Adoption of Value-Based Health Care Initiatives Within Health Systems.
JAMA Health Forum. 2025;6(5):e250746. doi:10.1001/jamahealthforum.2025.0746(オープンアクセス)

 

2025年5月22日
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